最近TOPの交代などもありますます活動が洗練されアメリカ内でもNo1のVCとして認められているY Combinator。今日はそんなY Combinatorの投資先の中でサクッと買収されちゃったスタートアップを見ていきましょう。(※スタートアップの横にSとかWとか書いているのは、Y Combinatorのプログラムの学期を指しています。例えばW14だったら2014年の冬学期、S13だったら2013年の夏学期となります。)
Eventjoy (W14)
モバイルに最適化された手数料無料のチケットサービス。チケットサービスアメリカ最大手のTicketMasterが2014年9月に買収(買収価格は非公開)。サービス継続中。
Hackermeter (S13)
Hackermeterはプログラミングのテストで、スキルを証明して採用につなげるサービス。HackerRankやCodeEvalなどが競合で存在していた。立ち上げ2ヶ月後にPinterestに買収され、サービス閉鎖。完全にAcqui-Hire(採用目的の買収。シリコンバレーではよくあるらしい)です。
Carsabi (W12)
中古車のサーチエンジンでC2Cモデル。2012年10月にFacebookにより買収。閉鎖。これもAcqui-Hire。
SocialCam (W12)
Britney SpearsやShane Battier、MCHammerなどが利用しFacebook内で最も有名なアプリと言われたiOS,Android両対応のモバイルビデオアプリ。スピンオフでJustin.tvとコラボした「Justin.tv Socialcam」と呼ばれるサイトはミュージックスターやスポーツチームに使われ大いに話題になったとのこと。Autodeskが6000万ドルでお買い上げ。
Glassmap (S11)
友達に、あなたがどこにいるか・何をやっているかを知らせるための美しい方法を提供。Grouponに2013年1月に買収される。金額非公開。
Munch On Me (S11)
レストランの1メニューに特化したdaily deal model(グルーポン系サービス)。学生特化グルーポンのCollegeBudgetが2012年5月に買収。閉鎖。
Stypi (S11)
Etherpadと似たリアルタイム共同編集できるテキストエディタ。2012年5月にSalesforceが買収。金額非公開。
TapEngage (S11)
広告主とパブリッシャーがタブレット最適化広告でコラボレーションできる仕組みを開発していたチームをDropboxが買収。これもAcqui-Hire。
Grove (W11)
IRCホスティング。2012年9月に「サイトを閉鎖することになりました…。」とブログに書いてから2週間で「Revolution Systemsに買収されたのでやっぱり継続することにしました!収益化もしてるんで、閉鎖することはありません!」と発表。いろいろあったんでしょうね。
MailGun (W11)
アプリなどに簡単にメールボックス機能を導入するWEBサービス(API)。2012年4月にRackspaceが買収。買収金額は非公開です。Parse.comなどの外部サービスとの連携も簡単で便利なので僕も最近ちょいちょい使ってますが、すでに買収されてたとは。
Sendoid (W11)
オンデマンドP2Pファイル送信システム。facebookが2012年3月に買収。金額非公開。Acqui-Hire。
TalkBin (W11)
ローカルビジネス向けのフィードバックプラットフォーム。顧客が地域企業に対してすぐにアプリでフィードバックできる。2011年4月にGoogleが買収。金額非公開。TalkBin by Googleとしてサービスを継続したが、利用率の低下により2014年7月末を持ってサービス終了。
AdGrok (S10)
Google Adwordsのキーワード選定と入札の自動化サービス。Twitterがマネタイズのために1000万ドルで2011年5月に買収。
FanPulse(Fanvibe) (S10)
ゲーム向けチャットシステム。日本だとカヤックのLobiとかのイメージかな。2011年6月に大学スポーツチームの監督とアスリートをつなげるWEBサービスbeRecruitedにより買収。Fanvibeのサービス自体は閉鎖している模様。Acqui-Hire?
GazeHawk (S10)
既存のWEBカメラを使ったアイトラッキングシステムを提供。2012年3月にFacebookが買収。Acqui-Hireだそうです。
Rapportive (S10)
メール受信箱の中の連絡先が変わっていないかどうかチェックしてくれる。2012年2月にLinkedinに現金1500万ドルで買収される。
The Fridge (S10)
誰でもプライベートなオンライングループを作れるソーシャルネットワークサービス。2011年7月にGoogleがGoogle+のグループを作るために買収。(Acqui-Hire)
1000Memories (S10)
印刷した写真を保存したり、WEBやモバイルで撮った画像のストレージと管理をしてくれるサービス。2012年10月にファミリーツリー系サービスのancestry.comに買収される。(知らなかったけど2009年にancestry.comは上場している。ファミリーツリー上場。)1000Memories自体はサービス終了。ancestry.comの方に機能が移行しているかもしれない。
CardPool (W10)
ギフトカードに特化したマーケットプレイス。ギフトカードが一般的らしいアメリカっぽいサービスですね。Blackhawk Networkが2011年10月に買収、金額非公開。
datamarketplace (W10)
データ販売に特化したマーケットプレイス。Infochimpsにより2010年12月に買収。Acqui-Hire?
Etacts (W10)
連絡帳に入っている人と疎遠にならないようにすることを助けてくれる、個人向けのCRMサービス。Salesforceが2010年12月に買収。Acqui-Hire?
Mertado (W10)
消費者が自分の利用頻度の高いオンラインコミュニティー内で新しい製品を見つけて買うソーシャル・ショッピングサービス。2012年1月にGrouponが買収。
Movity (W10)
治安、騒音、地価などの地理情報を提供し、家の購入においてより良い判断をできるようにするサービス。2010年12月に不動産サイトのTruliaが買収した。金額非公開。サイトは閉鎖はしていないものの、Truliaの方に機能が移行した可能性がある。
Zencoder (W10)
動画ファイルをWEBやモバイルに最適な形にエンコードしてくれるWEBサービス。Brightcoveが2012年7月に3000万ドルで買収。
番外編:Heroku (S08)
Rubyアプリ向けPaaSサービスのHerokuはSalesForceに2.5億ドルで買収されました。現在はJava, Node.js, Scala, Clojure, Python や PHPもカバーしています。当時の買収についてのインタビューが英語ですがTheNextWebに乗っていたので興味ある方はご覧ください。加熱しつつあったPaaS業界の環境が買収を受け入れるきっかけになったことがわかります。創業チームはそのままHerokuの開発のため残りました。
番外編:OMGPOP (S06)
2012年3月にZyngaが2億ドルで買収。しかしその後ユーザー数が落ちてきたためサービス打ち切りを決定、創業チームは買い戻しを提案したが却下される。却下した理由は「もし買い戻しをOKして、創業者チームがもう一回OMGPOPを成功させちゃったら、Zyngaの無能さがバレちゃう」からだとTechCrunchさんが言っています。
番外編:Wufoo (W06)
オンラインフォーム作成のWEBサービス。SurveyMonkeyにとり2011年の4月に3500万ドルで買収されました。Wufooは12万ドルしか調達してなかったので比較的Bootstrappingに近い形で4年半くらいを乗り切ったことになりますね。すごい。
番外編:Reddit (S05)
ソーシャルブックマークサイト。2006年10月にWiredやGQなどの雑誌/WEBメディアカンパニーのCondé Nastが2000万ドルで買収。しかし5年後の2011年9月にスピンアウトを発表。スピンアウトと言ってもオーナーシップは残しながら完全独立運営をする、ということのようですがRedditの共同創業者であるAlexis Ohanianを呼び戻しました。当時は「もう外部投資は必要ないと思っているけれど」と言っていましたが、2014年の9月には5000万ドルの資金調達を行いました。
その際、Y CombinatorのSam Altmanが持ち株の10%をRedditコミュニティに譲渡してはどうかと提案し、「Reddit Notes」が生まれたりしています。これは500万ドル分のRedditNoteをユーザーに抽選で配布するとのこと。
Reddit NotesにはBitCoinと同じくブロックチェーン技術が使われており、何か商品と交換ができるようなものになる、とのこと。そのうち通貨としての価値が生まれたりするんでしょうかね。
まとめ
金額が不明なものが多いのでEXIT例としてあまり参考になるものは少ないですが、
①事業とチーム丸ごと買収して自社のサービスに入れたい
②事業は要らないけど人材だけほしいAcqui-Hire
③独立して運営してOKだけどオーナーシップだけほしい(ケースとしては少ない)
こんな感じでしょうか。Y Combinator出身ですでにExitしているものは事業を買収して育てようというよりは、採用目的の買収(Acqui-Hire)が多いようです。Y Combinatorに採択されること自体がブランドになって、採用が大変な大企業からすると少し入社ボーナスを払ってでもその人材(特にエンジニア)を獲得したい、ということなんでしょうね。
一方、Y Combinatorの投資としてはビリオンクラス(企業価値1000億円レベル)はまだまだEXITどころではなく大きくなってますので、そちらは次の記事に書きます。お楽しみに!