スタートアップの資金調達をまとめたインフォグラフィックが素晴らしいーどうやって投資家とパイを分けていくか。

資金調達が関係者にどういった影響を与えるのかを1枚にまとめたインフォフィックがFunders and Foundersに載っていて、とても分かりやすかったので日本語バージョンを作ってみました。

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資金調達に関する説明の方もとても分かりやすかったので、翻訳してみました。数字や前提はアメリカの話なので少し日本と違う部分もあるかもしれませんが(あと、インフォグラフィックの方と数字も合ってませんが)、本質的な部分を理解するには問題無いと思います。(内容については責任持てませんので自己責任かつ弁護士の方にちゃんとご相談して行われるようお願いします。)
 

=========以下解説文翻訳=========

 

まず、何で資金調達について、あなたがやる必要がある事の1つとして話す必要があるのか、ということを理解してみましょう。資金調達は命題ではありません。資金調達の反対の言葉は「ブートストラッピング」、つまり自分のお金でスタートアップを切り盛りするというプロセスです。資金調達をするまでしばらくの間ブートストラップで運営していた会社はいくつかあります。MailChimpやAirBnBです。
 
あなたが既にどのように資金調達が働くかということの基本をしっていれば, 最後まで読み飛ばして下さい。この文章の中で、資金調達のプロセスの説明を最も分かりやすい形で書いています。それではベーシックスを始めて見ましょう。
 
あなたが資金調達する時はいつでも、自分の会社の一部を諦めることになります。資金調達をすればするほど、自分の会社の一部が無くなっていきます。その「会社の一部」というのは 「株式」の事です。あなたがそれをあげた人は誰もがあなたの会社の「共同所有者」になります。
 

パイを分ける

基本的な考え方はパイを分けるという考え方です。あなたが何かを始めるとき、あなたのパイはすごく小さいです。あなたはその一口サイズのパイの100%を所有しています。あなたが投資を受けて会社が成長すると、パイの大きさが大きくなります。大きくなったパイのあなたの取り分は、最初の一口サイズのパイの全部よりも大きくなるでしょう。
 
Googleが株式公開をしたとき、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンはそれぞれGoogle株式の15%ずつを所有していました。でも、その15%はものすごーく大きなパイの15%なのです。
 

資金調達のステージ

あるスタートアップが資金調達を行う流れを見て行きましょう。
 

アイデアステージ

最初はあなた1人だけです。あなたはとても聡明で、たくさんアイデアが出てきますがその中で1つのこれだ!というアイデアを決めました。あなたはそのアイデアについて動き始めます。あなたが動き始めた瞬間に、あなたは価値を生み出し始めたのです。その価値はあとで株式に変換されますが、あなたは100%を所有しているし、まだあなたしかいないし、まだ会社も設立していないので株式についてはまだ考えてすらいません。
 

共同創業者ステージ

あなたのアイデアを物理的なプロトタイプにしようとし始めると、それが思っていたより時間がかかるということに気づきます。(いつも思っていたより時間がかかります)あなたは自分以外の人のスキルを活用するべきだと知っているので、共同創業者をさがします。熱意がありスマートな人を探します。その人と数日そのアイデアについて一緒にやってみて、その人がアイデアに多くの価値を与えてくれると分かったので、共同創業者にならないかと誘います。でもあなたはその人に給料を払う事が出来ません。(もしそれが出来たら、共同創業者ではなく従業員として雇う事になるでしょう。)なので、株式をもってその人の仕事と交換してくれるように誘う事になります。 (それをsweat equity、労働提供出資と言うそうです) じゃあ、どの程度株式を渡せばいいでしょうか? 20% – 少なすぎ? 40%? 最終的にはこの数字は、このスタートアップを実現するかどうかすらあなたの考え次第です。しかしあなたは思いました。現在この時点ではあなたのスタートアップは実際には価値がゼロであり、あなたの共同創業者は多大なリスクを背負う事になるということ、そして、その人が仕事の半分をやってくれることになるというとこに気がついて、50%を渡す事にしました。そうでなければ、その人はあなたよりもモチベーションが低くなってしまうかもしれません。本当のパートナーシップはリスペクトの上に築かれます。リスペクトはフェアネスの上に築かれます。結局のところフェアネスこそが崩壊の理由になるのです。あなたはこの関係を持続的な物にしたかったので、共同創業者に50%の株式を渡しました。
 
すぐに、あなたは共同創業者である2人が毎日3食カップヌードルを食べ続けていることに気づくようになります。あなたは資金調達が必要です。すぐにVCの門を叩きたくなるでしょうが、いまのところ彼らに見せることが出来る「動くプロダクト」がありません。なので、他の選択肢を探しはじめました。
 
家族や友達から調達: あなたは「スタートアップ投資のチャンスです!」という新聞広告を打ちたくなるかもしれませんが、あなたの弁護士をやっている友達がこう言うでしょう。「それ、証券取引法違反になってまうで」、と。今はあなたの会社は「プライベートカンパニー」であり、「一般公開で」「知らない人たちから」投資を募集するのは「株式の公募」にあたってしまい、プライベートカンパニーが行うと違法になってしまうのです。ではだれからお金を得れば良いのでしょうか?

  1. 認定投資家 – 銀行に1億円あるか、年間2000万円生み出している人。彼らは「洗練された投資家」、つまりあなたの会社のような超リスクの高い会社に対して投資しても問題のない教養を持ち合わせていると政府が判断している投資家なのです。ででも、1億円持っている知り合いが1人もいなかったらどうしましょうか?あなたはラッキーです、なぜならその法律には例外があるのです – 友人と家族です。
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  3. 家族と友人 – もしあなたの家族や友達が投資家ほど裕福ではなかったとしても、あなたは彼らのお金を投資してもらうことが可能です。これこそがあなたが決断しなければいけないことです、なぜなら共同創業者には裕福な叔父さんがいるからです。その叔父さんに150万円投資してもらい、会社の株式の5%を渡します。そうすると、あなたは次の6ヶ月の家賃とカップ麺代を払いながらプロトタイプを開発することが出来ます。

 

会社を登記する

叔父さんに株式の5%を渡すためにはLegalZoomのようなオンライン登記サービスを使う($400)か、もしくは弁護士の友人(0$-$2,000)を通じて会社を登記しておく必要があります。あなたは普通株を発行し、5%を叔父さんに渡して20%を将来の従業員のために確保しておきます。この20%は「オプションプール」と呼ばれます。(なぜこの20%を確保したかというと2つ理由があって、1. 将来の投資家がこのオプションプールを要求すること 2. このストック部分はあなたとあなたの共同創業者が何をしても安全だからです。)
 

エンジェルラウンド

叔父さんのお金をポケットに入れて6ヶ月間でそのお金がなくなる前に、あなたはすぐさま次の投資をしてくれるツテを探し始める必要があります。もしお金が尽きてしまったら、あなたのスタートアップは死にます。なので、あなたは選択肢を探す必要があります。
 

  1. インキュベーター, アクセラレーター、そして エクスキュベイター – これらはお金、場所、そしてアドバイザーを与えてくれます。お金は大きくありません – だいたい250万円(と引き換えに5〜10%の株式シェアを渡す契約)ですがYCombinatorのポール・グラハムのような何人かのアドバイザーはお金よりも価値があるかもしません。
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  3. エンジェル – HALO reportによると2013年の第一四半期ではエンジェルラウンドの投資額は平均で6000万円にのぼるとのことです。これはいいニュースですね。悪い方のニュースは、そのエンジェルたちは2.5億円の企業価値で投資を行っているということです。じゃあ、自分の会社に2.5億円の価値があるか自分に聞いてみましょう。どうやって判断したらいいしょうか?ベストケースを考えてみましょう。まだあなたにとって始めたばっかりで、プロトタイプももうすぐ出来る時くらいの段階で、あなたが持っているものを見て1億円の価値があると考えてくれるエンジェルを探し当てたとしましょう。彼はあなたの会社に2000万円の投資を承諾してくれます。

 
会社の何パーセントをエンジェル投資家に渡すことになるのかを計算しましょう。20%ではありませんよ。「プリマネーバリュエーション (新しい資金が入る前にその会社がいくらの価値であるか)」と 新規投資額を足さなければいけません。
 
1億円 + 2000万円 = 1億2000万円 (この和をポストマネーバリュエーションと呼びます)
 
(こういう風に考えて下さい,最初にあなたがお金をもらって、それからシェアを分けるのです。もしエンジェル投資家のお金を加えずに分け前をあげたとしたら、あなたはエンジェル投資家が参加するまえのパイを分けていることになるのだと。)
 
では次に投資額をポストマネーバリュエーションで割ってみましょう。
2000万円 / 1億2000万円 = 16.7% (1/6)
 
ということでエンジェル投資家の持ち分は16.7%、もしくは1/6となります。
 

どのように資金調達が働くのか – パイを切る、とは

あなた、あなたの共同創業者、叔父さんはどうでしょうか?どの程度パイが残るでしょうか?すべての人のシェアは1/6ずつ薄まります。 (詳しくはインフォグラフィックを見て下さい。)
 
株の希薄化(株が薄まること)は悪い事でしょうか?いいえ、何故ならあなたのパイは投資を経る毎にどんどん大きくなります。一方で、はい、希薄化は悪い事です。 なぜならあなたは会社のコントロールを失って行きます。じゃあどうすれば良いでしょうか?答えは、投資は必要なときだけ受けるようにしたらいいのです。あなたがリスペクトする人からのみお金を受け取るのです。(他にも手段はあります、例えば従業員や公開株主からの株式の買い戻しとかです。でも、それはずっと先の将来の話ですが,)
 

ベンチャー・キャピタル ラウンド

ついに、あなたは最初のバージョンを開発完了し、ユーザーを呼び込みトラクション(Quantitative evidence of market demand:市場ニーズの定量的証拠)を得始めます。VCにアプローチしましょう。VCはいくらあなたにくれるでしょうか?彼らは5000万円以上を投資します。仮にVCがあなたの持っているサービスに対して4億円の価値をつけたとしましょう。念のため、これは投資前企業価値です。ここで彼が2億円投資したいと言ったとします。計算方法はエンジェルラウンドと同じです。VCはあなたの会社の33.3%の株式を取得します。(今やあなたの会社は彼の会社でもあると言えますが。)
 
あなたにとっての始めてのVCラウンドはシリーズAと呼ばれます。今後、シリーズB、Cと続けてラウンドを経ていくことになります。また、ここからいずれかのポイントであなたに3つのことが起こります。①資金が尽きてしまい、かつ誰もあなたに投資してくれなかったら、会社は死にます。②資金を調達し、どこかの大きな会社が買いたいと思うようなものを作ると、その会社に買収されます。③あなたがめちゃくちゃ上手くやって何回か資金調達を行った後に、株式公開(IPO)をしようと決めます。
 

何故会社は株式公開(IPO)する?

その質問に対しては基本的な2つの答えがあります。テクニカルな話として、株式公開は単にもう一つの資金調達の方法だということです。ただし、この場合は数億人の人からの調達になります。株式公開をすることで会社は株式市場で株を売る事が出来るようになり、誰でも会社の株を買う事が出来るようになります。誰もが買えるということは、個人投資家に投資を頼むというよりは、大量の株を個人投資家に売れるということを示します。つまり、現金を得るためのより簡単な方法に聞こえますね。
 
株式公開をするにはもう一つの理由があります。今のところあなたの会社に投資した人はあなたも含めて「restricted stock(制限付き株)」を持っています。基本的にこの株式は誰かに勝手に売る事が出来ません。何故でしょうか?それはこの株がIPOのプロセスが行う「政府の認証」を受けていないからです。政府があなたの株式公開のペーパーワークをチェックしなければ、あなたは誰もが知っているヘビオイル売りと同じ扱いになってしますのです。つまり、政府は普通の人がそういう会社に投資するのは安全ではない、と思っているということなのです。 (もちろんそれにより自動的に、貧乏な人がハイリターンな投資に参加出来ないということにもなりますが、それはまた別の話。) あなたの会社に現在投資している人は最終的にはその制限付き株を売って現金か、現金と同じくらい流動性のある制限無し株に変換したいと思っています。これは流動性のイベント、あなたの持っているものが簡単に現金に出来るようになる瞬間なのです。
 
また、もう1つあなたに株式公開してほしいと思っているグループがあります。投資銀行、有名どころの名前を挙げるとゴールドマンサックス、モルガンスタンレーなどのインベストメントバンカーたちです。彼らはあなたに電話をかけてきて、主幹事(あなたの株式公開業務の事務仕事を手伝って、富裕層のクライアントに電話をしてあなたの会社の株を売ってくれる)にしてくれるように頼んできます。なぜインベストメントバンカーたちはその仕事をやりたがるんでしょうか? 何故なら彼らは資金調達したお金の7%を手に入れるからです。このインフォグラフィックの例だと株式公開で235億円を調達しますので、7% は約16.5億円になります。 (ちなみに12人くらいのバンカーが2〜3週間で行う仕事に帯する報酬です。) 見ての通り、誰にとってもWIN-WINなディールですね。
 

スタートアップの初期従業員になる、とは

最後に述べるけれども決して軽んずべきでないことなんですが、あなたの会社に対して「sweat equity」、労働提供出資をしてくれた投資家のうちの何人かは初期の従業員であり、潰れるかもしれないというリスクのあるあなたの会社で低い給与で働くことと引き換えに株式をもらっているのです。株式公開というのは、彼らにとっての遅れて来た給料日でもあるのです。
 
 
元記事:How Funding Works – Splitting The Equity Pie With Investors

=========以上、解説文翻訳=========

 
 

まとめ

いかがだったでしょうか。株式公開を目指してみたいと思う方はがんばって下さい!尚、もうちょっと詳しく資金調達や株式公開、日本での話とかも気になる方は下記の磯崎さんの本が非常に勉強になりますので、ぜひ呼んでみて下さい。
 



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